2020.01.19
 町並み保存地区を巡るコースに春風館と復古館があるが、その向かいの民家に高棟莞也(たかむねかんや)氏による木版画が掛けられている。これは竹原が観光地化されるかなり前から存在している「街角展示芸術」なのだが、私の知る限りでは観光ガイドや旅行本には登場してはいない。だが上市・下市区(現在の本町を含む)では「高棟さんの版画」として親しまれていたのである。最初にこれを撮ったのは1997年だったが、その頃はこの民家内で数多くの版画が展示販売されていた。高棟莞也氏は2002年に亡くなられでおり、いつのまにか展示販売はされなくなったが、この「江戸時代の下市村絵図(部分)」は経年変化しながらも現在もここに飾られている。
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#01:高棟莞也の木版画(1997/04/28撮影)

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#02-03:高棟莞也の木版画(2001/05/03撮影) 

それから10年が経過した。タイトル文字は色褪せてしまったが版画は傷みもなく残っていた。6枚の画用紙で1枚の画となっていることが良く分かる。展示販売されていた頃は、この画用紙サイズのものが数十枚単位で各箱に差されており、この木版画と同じものを何度が探したのだが見つからなかったのはそのせいである。
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#04-05:高棟莞也の木版画(2011/05/03撮影) 

この頃から傷み始めたようで、木版画がビニールで覆われていたがそれも朽ちて穴が開いていた。玄関には高棟莞也による手彫りの住所看板も健在であった。
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#06-08:高棟莞也の木版画(2013/01/03撮影) 

その1年後には画の一部が欠落しており、とうとう修復できない状態にまでなってしまった。このまま破損が進むと額自体もいつしか取り外されてしまうのではと、誰かの救いの手が差し伸べられることを祈るばかりである。
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#09-10:高棟莞也の木版画(2014/05/04撮影) 

その年の8月に開催された東京藝大生による竹原イベント「“芸術”、ですか?-歴史・町・広島竹原芸術祭-」の関連企画として「ぶらり町並み版画展-高棟莞也-」が町並み保存センターで開催されていた。もちろん訪れたが、展示されていた木版画の多くが展示販売されていた時に箱に入っいてた覚えのあるもの。入場無料だったためか特に撮影禁止では無かったのでお気に入りの一枚だけを写真に収めておいた。まだ電柱が立っている頃の懐かしい竹小への通学路と遠くには三井の煙突。私が写真に意識して収めていた三井の煙突があるのだ。鑑賞中に訪れた老夫婦も「ここも知っとる」と一枚一枚を微笑みながら指さしされており、やっと高棟莞也の木版画にスポットライトが当たる日が訪れたのだが、あの壁の「江戸時代の下市村絵図(部分)」そのものも同じ木版画もここには見当たらない。
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#11-15:高棟莞也の木版画(2014/08/17撮影) 

無いのならばと展示会を訪れた後に「江戸時代の下市村絵図(部分)」が気になって立ち寄ってみると、破損は中央の下部に及んでいたがまだ存在はしていた。
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16:高棟莞也の木版画(2014/08/17撮影) 


もう屋外のままでは、このまま朽ち果てるのは仕方がない。
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#17:高棟莞也の木版画(2015/05/04撮影)

・・と諦めていたが、色褪せが九割に及んでしまったものの誰かが欠落部分を貼り直した形跡が有った。ということは完全な放置ではなく、誰かが救いの手を差し伸べていたということ。 
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#18:高棟莞也の木版画(2017/05/04撮影) 

次は「江戸時代の下市村絵図(部分)」が載せられていることを期待して買った木版画集と絵葉書セットを紹介しておこう。だがどちらにも「江戸時代の下市村絵図(部分)」は見当たらなかった。現存する建物を彫ったものを集ているので、江戸時代の地図が題材のものが無いのは仕方がないこと。

木版画集は、藤井酒造の「たけはら酒蔵交流館」で偶然見つけて購入したもので、高棟莞也氏の晩年頃に出版された版画集「安芸の小京都たけはら-版画で見る竹原観光ガイド-」(編集:竹原市観光協会)である。これは 2001年6月に1000部発行されたようだ。
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#20:高棟莞也の木版画集(2002/08購入)

絵葉書については「道の駅」で買ったと思うのだが憶えておらず旧ホームページにも掲載はしていない。これを買った時は表紙のような写真集の葉書と思っていたのだが、開けてみたら嬉しいことに「高棟莞也の木版画集」だった。
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#21:高棟莞也の木版画集絵葉書

大黒神社に高棟莞也氏による「大黒様」が飾られている。ここの壁でも良いが、町並み保存センターや竹原美術館の所蔵品に加えて欲しい。「江戸時代の下市村絵図(部分)」の版木が未だ残されていれば、これらの写真をもとに摺師に頼めば再生ができる可能性もある。版画の世界を目指す上野の東京藝大生に頼む手もありだ。
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#22-23:大黒神社の高棟莞也木版画(2014/05/04撮影)