2020.01.07
 昨年の10月帰省では、実家の風呂が解体されていたので大広苑(だいこうえん)の風呂を利用した。1960年代に実家に有った五右衛門風呂が抜けた時、直るまでの一週間に使っていた地蔵湯が無くなったってしまったので、それ以後では初めての竹原での外風呂である。宿泊客以外でも利用ができる大広苑の風呂は、2001年4月20日に新館ができた時、ヨーロピアン調大風呂「ビーナスの湯」との名称で併設されたものである。これまでの出張や旅行等で利用してきた各種ホテルの宿泊経験からすると、この風呂はビジネスホテルにある大浴場といった雰囲気である。
 ロビーから階段で2Fへ上がって左側にある扉を開けるとカウンターがある。宿泊外利用料として700円払うと首からぶら下げるロッカーキーとハンドタオルが貰えるので、椅子に座って喫煙できる大休憩室の隅にあるキー番号と同じロッカーを探して裸になって浴室のドアを開けて中にへと入る。ロッカーは会社の更衣室等によくある一般的なタイプであり、キーはブレスレット型ではないので貴重品があるならば首から下げたままでの入浴となる。
 中に入ると左側にはサウナ室があり、更に大浴場のドアを開けると流し場と3槽?の大風呂がある。積まれた椅子と洗面器を取って座面を洗った後に座る。ボタンを手の平でバンっと押すと15~20秒程度水栓からお湯が出る。温度調節や水の蛇口があったかは記憶していない。
 入った時間は17時半頃だったが、先客は3人でそれぞれが3つの浴槽を個々に独占していた。3人が入れ代わり立ち代わりにサウナに入っては浴槽へと戻るというローテーションだった。

 その大広苑の変遷については、これまで何度か記事にしてきたが歴史は古い。大広苑ができる前の土地は1970年頃まで広大な田圃だった。春には一面れんげ畑となり、収穫の秋には稲穂が干されて藁焼きの煙があちらこちらで立ち昇る。ここが私と友人の遊び場となっていた。
 1970年頃に全国的なボウリング・ブームが訪れた頃、この広大な田圃が埋め立てられて「竹原スポーツセンター」が突然できた。その後、駐車場の南側へはバッティング・センターが増設され、その頃にはブームは終焉を迎えていたと思う。それからの順番は定かではないが、頑丈なレーンを利用したのか墓石展示場、BかC級の映画館、結婚式場となり、現在のホテル旅館業へ至っている。ボウリング・ブーム当時は1,2度程度訪れた微かな記憶はあるが、ボウリング自体より裏にあるマシン室には興味津々。倒れたピンが自動的に掃出されて整えられ、ボールはベルトコンベアで床下から元に戻される。その自動機械が開いた窓から常時観察できていた。その時のボウリング・システム会社名が「AMF」であり、アメリカン・マシン・アンド・ファウンドリー (American Machine and Foundry) であったことだけが鮮明な記憶として今も残っている。

 そのボウリング場だった名残りが大広苑のこの看板である。この手の名残りがある看板は関東ではロヂャースグループ(ワコーとジュンテンドーを足したような業態に近い)に多いが、西条ならば賀茂ドライブインが現在はホテルカモとなっているといえば分かり易いかもしれない。その大広苑のシンボルであったボウリングのピンがいつしか取り外され、カラーリングは赤白から緑へと変わって現在に至っている。新館の屋根にも同様の高い位置に看板が備わったので、それより低いこの古い看板はその役目を終えたようにみえるが、駐車場の利用者からは見え易いので役には立っている。それでは最古の写真から現在のものへの変貌を紹介しよう。

#01
#01:大広苑の看板(1997/07/13撮影)
白地で消された部分に何が書かれていたかは憶えていない。写真は黒地だが実際は赤である。また、ピンの首には2本の赤ラインが有ったが、この頃は色褪せてしまっていた。因みに既にボウリング場ではない。

#02
#02:大広苑の看板(1998/03/02撮影)
この写真では看板全面が塗り直されて、結婚式場、ホテル、サウナ、和風レストラン花車が書かれたが、実際には3面のうちの2枚がこれであり、残り1面は白地のままである。

#03
#03:大広苑の看板(2003/05/01撮影)
そしてシンボルとなっていたボウリングのピンが撤去された。

#04
#04:大広苑の看板(2004/08/01撮影)
新館の屋根に新しい看板ができている。

#05
#05:大広苑の看板(2005/01/02撮影)
新館の看板と同じデザインに変って新たに「風呂」が追加された。なぜか「大広苑」の字体が変わっているが新館の字体とは異なる。また左上の斜め線がクローバーへ変わっているのも興味深い。

#06
#06:大広苑新館の看板(2008/12/28撮影)
これが2001年に増設された新館と「ビーナスの湯」である。