2019.12.14
師走はもう中旬が過ぎ、ボーナス日の週末は郵便局内や道路が人であふれ始める頃。こちら関東地方では暑いのか寒いのかハッキリしない日々が続いている。竹原の冬は特別で朝方は乾いたような寒さとなる。朝日が昇って外に出れば枯葉を集めてパチパチと燃やす焚火から舞い上がる煙、目には染みるが臭いは心地よい。夕陽が沈んで家に帰れば石油ストーブの燃える臭い。上に置いたヤカンから噴き出す蒸気が冷たいガラスを結露させ、その曇ったガラスへ描くのは決まって「へのへのもへじ」といった懐かしい竹原での暮らしだった。
こんな季節に時々欲しくなるのが酒粕だ。昔は板状のものをちぎってはストーブに載せて、焦げ始めた頃にアチチッと言いながら素早く裏返す。何度か裏返して香ばしいかりが漂い始めたらお皿へ乗せ換えて準備完了。用意しておいた砂糖醤油の小皿へ丸めた酒粕をチョンと浸け、コフ~コフ~と口に入れて噛むと、熱い酒粕の中から酒香りとアルコーム分が広がる。熱燗をお猪口で飲んだ時のようにホンノリと酔った気分になった頃に満足感が訪れる。
石油ストーブがファンヒーターに変わってしまったこの頃は板状の酒粕が手に入っても焼くことはできない。ガスコンロやカセットコンロで試した時は遠赤外線に乏しいのか丸焦げになるまで焼かないと中まで熱くならず美味しくないのだ。
遠い昔は板状の酒粕を婦人ショップ(現ヤマト運輸)扇町の生協(現更地)や三原スーパー(旧まりも/現警察署)などで買っていたが、2017年の大晦日に道の駅たけはらの売店レジ近くで偶然見付けたのがこれである。見慣れた板状のものではなく粘土状の酒粕だった。
さて酒粕は欲しいのだがどうやって食べれば良いのだろうか。思い出したのが母が真冬によく作ってくれていた団子汁である。イリコ出汁の味噌汁の中に薄く切ったジャガイモと練ってちぎった小麦粉の団子が入っている。豚汁の肉の代わりにダマ状の団子が入っているようなものだ。コーンスープの底にとどった塊りと言ったほうが分かり易いかも。この酒粕を手でちぎってマグカップへ入れて、熱湯を注ぎながら掻き混ぜれば粕汁(かすじる)の出来上り。
#01-02:宝寿龍勢の酒粕(2017/12/31購入)
この酒粕は藤井酒造の宝寿と龍勢を作る時の搾りかす。宝寿と龍勢の酒粕を地蔵町の若竹でちぎり加工したものであり、お馴染みの前川酒店による販売という完璧な竹原製品なのだ。これを正月に竹原で食べれば地産地消というか、日持ちは良いのだが要冷蔵なので自宅へは持ち帰ることは諦めた。これだけをクール便で送るのもムダ。
これを実家へ買って帰り試しに粕汁を作ってみたところ、予想外に美味しかったのである。砂糖などの甘味は入れておらず、純粋に酒粕と熱湯だけ。熱い粕汁が喉元を過ぎると肩や背中から徐々に温まって濃いアルコール分が息と一緒にでてくる。酔った気分というよりは、本当に酔ってしまうほどの濃いさなのである。裏のシールにはこう書かれている。「表面が白くなったり、ピンクになることがありますが、酒質本来の性質です。安心してお召し上がりください。アルコールが若干含まれていますので、乳幼児・お子様・車の運転はお控え下さい。」とあり、運転を控えるぐらいに濃く、酒粕でありながらアルコール度数を確認したくなる大人の酒粕だった。
コメント